AIベンチャー・エルピクセルの着服にみる、今改めて学ぶべき稲盛和夫の会計哲学

実践

AIベンチャー・エルピクセルの横領・着服にみる、今改めて学ぶべき稲盛和夫の会計哲学

こんにちは、そめです。

 

2020年6月10日、ベンチャー界隈だけでなく、日本のビジネスマンを騒然とさせるニュースが飛び込んで来ました。

 

▼それがこちら

医療や製薬、農業といった「ライフサイエンス」領域の画像解析ソリューションを開発する東大発ベンチャーのエルピクセル。FNNが報じたところによると、6月10日、同社元取締役で経理担当だった志村宏明容疑者が会社の口座からおよそ29億円を着服した疑いで警視庁に逮捕されたことがわかった。着服金額は総額で約33億円と見られている(【追記】記事公開後に同社が発表したプレスリリースにより、総額は約33億5000万円であることがわかった)。

 

本当に驚きです…。

これは、「肝の小さい僕には無理…」「逆に大物やな…」とか思っている場合じゃなく会計ガバナンスはどうなってんだと言う話ですよね。

 

そんな中、おそらくこの事件を受けたであろう、ひとつのツイートを目にしました。

元KDDIで務められていたというTakaya Shinozukaさんのツイートです。

非常に学びの多いツイートです。これを見て思ったのが、まさに第二電電(現・KDDI)創業者である、稲盛和夫さんの息が脈々と受け継がれているのだなということです。

 

このツイートにある運用内容はまさにこちらの本にまとめられており、僕も非常に感銘を受けたものです。

 

だから、ベンチャーに資金が流れている今だからこそ、会計ガバナンスの基礎として、稲盛和夫さんの会計哲学を見直すべきではないかと思い、ブログを書いた次第です。

 

 

なぜタイトルを「会計学」ではなく「会計哲学」と書いたか?

稲盛和夫

ー Wikipediaより

なぜ、僕が「会計学」ではなく「会計哲学」と書いたか? それには理由があります。

 

著書を拝見して感じたのは稲森さんの「会計」に対する向き合い方は、HOW TOではなく「根幹にある思想」がベースにあり、それを実現するための方法論という記述に読み取れたからです。

 

その象徴的な一文がこちらです。

 

人間として正しいことにもとづいて経営していこう

創業当時の私は会計についても、また経営についても知らなかった。

(中略)

そうであれば、経営の知識はないのだから、すべてのことを原理原則に照らし判断していこう、直面した一つ一つの問題について「そうだ、こうでなければならない」と心から納得できるやり方で道を切り開いていこう、と決心をした。こうして、原理原則、つまり、世間で言う筋の通る、人間として正しいことにもとづいて経営していこうと決めたのである。

ー「稲盛和夫の実学―経営と会計」より引用

僕は、これを初めて読んだ時に、度肝を抜かれたと同時に、心を鷲掴みにされました。

経営とはどこか後ろ暗い、目に見えない嫌らしい部分があり、笑顔の下で足の踏み合いをしているのが常。世の中そんなもんだろうと思っている部分があったのです。

ところが、日本を代表する稀代の経営者である稲盛和夫さんの、根幹の部分、しかも「会計」という綺麗事だけでは語れないであろう著書において、「人間として正しいことにもとづいて経営していこう」という書き出しで始まっていたからです。

 

僕は震えながらも本に目を釘付けにされながら、本を読み進めました。

 

そこには、こうした稲盛和夫さんの「哲学」とも言える経営論から抽出された会計学が丁寧に記述されていました。

 

そこで、出てきた、「人間としての正しさ」に基づいた会計学の一部を紹介したいと思います。

 

一対一対応の原則

経営活動においては、必ずモノとお金が動く。そのときには、モノまたはお金と伝票が、必ず一対一の対応を保たなければならない。この原則を「一対一対応の原則」
と私は呼んでいる。これは一見当たり前であるが、実際にはさまざまな理由で守られていないのが現実である。

(中略)

その結果、社内の管理は形だけのものとなり、組織のモラルを大きく低下させる。
数字はごまかせばいいということになったら、社員は誰もまじめに働かなくなる。そ
んな会社が発展していくはずがない。

ー「稲盛和夫の実学―経営と会計」より引用

つまりは、伝票操作などにおける会計の「抜け穴」をつくようなやり方で、お金の流れを操作し、決算をよく見せたり、月の売上達成を操作したりなどすることが、経営の現場ではよく見られると、問題視しています。

 

なので、そうではなく、発生ベースで瞬時に必ず「伝票」と「お金」が「一対一」で動くべきであると、稲森さんは説いています。

 

これを「ガラス張りの管理のもとに置く」とも表現しており、会計の透明性は企業の新要素のものであるという考えです。

 

ここにも、稲森さんの「人間としてごく当たり前の正しいこと、モラルを守ろう」という思想がよく現れています。

 

ダブルチェックの原則

入出金の管理においては、お金を出し入れする人と、入出金伝票を起こす人を必ず
分けることが原則である。小さい会社の場合、たとえば社長自らが出金伝票を切り、そして自分で現金を出すということが、日常的に行われている。これでは、悪意はなくともいくらでも勝手なことができるし、厳密な管理はできない。それを防ぐためには、伝票を起こす人と金を扱う人とを必ず分ける必要がある。

ー「稲盛和夫の実学―経営と会計」より引用

具体的な方法論ですが、ベンチャーで特に人数が少ない場合、手間を面倒くさがり、こういったことは往々にして蔑ろにされてはいないでしょうか?

 

ここでは、最初のツイートにもあった、金庫の鍵を分けて二人の人間が管理するという方法も書かれています。

 

一見したところ、思想的ではなく、かなり具体的な「方法論」の話に見えるでしょうか?稲森さんはこの「ダブルチェック」に関して、こう記述しています。

 

このように人の心は大変大きな力も持っているが、ふとしたはずみで過ちを犯して
しまうというような弱い面も持っている。人の心をベースにして経営していくなら、
この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いも必要である。

(中略)

真面目な人でも魔が差してしまい、ちょっと借りてあとで返せばいいと思っている
うちに、だんだんとそれが返せなくなってしまい、大きな罪をつくってしまう。これ
は、管理に油断があったためにつくらせてしまった罪でもある。

ー「稲盛和夫の実学―経営と会計」より引用

つまり、人間は弱い。その前提に立って、横領や不正ができない体制を作ることは、「社員を守る」ことであると書かれています。

 

そして、その状態を作れなかった責任は他でもない、経営者である、ということです。

 

懐の深い話…、泣くわ…。

 

 筋肉質の経営に徹する

企業は永遠に発展し続けなければならない。そのためには、企業を人間の体に例え
るなら、体の隅々にまで血が通い、つねに活性化されている引き締まった肉体を持つ
ものにしなければならない。つまり、経営者はぜい肉のまったくない筋肉質の企業を
めざすべきなのである。私はそのことを「筋肉質の経営に徹する」と表現している。

(中略)

本質的に強い企業にしようというのであれば、経営者が自分や企業を実力以上によく見せようという誘惑に打ち克つ強い意志を持たなければならない。

ー「稲盛和夫の実学―経営と会計」より引用

 

経営において資金は血液です。 その中で、いかに無駄をなくし、身の丈以上の振る舞いを避け、本質的な経営に向き合うかの重要性を説いています。

 

ここにおいては、意見が分かれることも予想されます。

 

著書の中では、新品を買い与えず、徹底的に中古にこだわったことや、それをさらに中古として売る話などが出てきます。

 

スピード重視の経営の場合「環境は生産性に直結する」という考えから、それも一つの投資であるという思想の方もいると思うからです。

 

しかし、今新型コロナの影響で、オフィスのあり方も問われています。本当に経営に必要な筋肉質な体制とは何か?を考えてみる良い機会ではないかと思ったりもします。

 

まとめ・理念は本物か?

夕日をバックに肩を組む人たち

「ビジョナリー・カンパニー」という言葉が使われだして久しい昨今です。

その体現を企業という組織が行うために「人としての正しさ」という本質をどこまで見失わず、形骸化させず、システムとしてそれを運用できているでしょうか?

ビジョンを掲げ、ピッチを作成し、資金を調達し、普通の人生では考えられないほどのお金が、自身の手元にやってきた時。そこで自分を見失わない経営が本当にできているでしょうか?

今回の1件で改めて問われていると感じており、その一助となる稲森さんの言葉や思想は、改めて僕の心に何かを灯す力があったなと思う次第であります。

 

※ もちろん多くの経営者が大きな志にまっすぐに経営をしていると信じていますし、この1件で世間やVCの目が疑念の目になってしまわないことを祈るばかりです。

 

ここに書かせていただいたのは、稲森さんの著書のほんの一部です。このブログを読んでもし、「稲森さんの思想に触れてみたい」「その会計学の思想をインストールしたい」と思われた方は、こちらの本を購入してみてください。

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最後までお付き合い、ありがとうございました!!

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  • この記事を書いた人

そめ

上場企業・ベンチャーなどを歴任し、現在は某社でCMOとして、勤務。企業コンサルティングなども行っております。ブログにて、実践的なノウハウを提供中。お問合わせはTwitterDMにて。

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